其ノ四十二 「他人事に(ひとごとに) 冷血雑言 かまびすし」
人間の隠された嫌な部分を見た気がして、とても腹が立った 一日だった 幾つかの新聞報道の論調や、幾人かの評論家の主張に乗 じて、今回のイラク人質事件の被害者の家族や関係者に対し ての嫌がらせがあいついでいるらしい。 もともと危険な場所に行った方が悪くて『自業自得』だという 論調だ。ということは、殺されても仕方がないという事である。 一方では、勿論そういった見方をする人がいることも否定でき ないことだが、彼らは素朴に取材のためやイラクの人々の為に今、 自分が出来ることをする為に自発的にボランティアスピリットで行っ たに過ぎないのだと思う。 国益とか国家の為にではなく、一人の人間として、同じ人間が 戦争で苦しんでいる状態をほっておけずに動いたのだ。 感じていても何も出来ずにいる僕たちや、イラクの戦争が他国 の事で関係ないと思っている沢山の人たちよりもはるかに勇気の ある人たちだと僕は思う。 その民間人が、イラクの「ある意図」を持った集団に政治的な利 用をされようと拘束されたのである。 その原因になったのは他でもない、イラクの人々にとっては今や イラクへの政治的侵略を試みようとしているに過ぎないアメリカに 加担して、自衛隊を復興支援の名目で派遣した日本政府の 断行にあるのだ。 ましては、その家族の一員を人質に捕られその生命の危険に 晒されている身内にとっては、ただただ政府に人命保護を願う事 しかないのだ。 物事の本質を問わずに、彼らが危険を承知で出掛けた事を 「自業自得」と罵る、無神経な意見や罵詈雑言は人間として 哀しさを通り越して人にあるまじき悪戯である。 インターネットや留守番電話などに「死ね!」とか「ふざけるな!」 などと平然と入れ込む神経、おぞましい限りだ。 しかも、匿名で・・・・・・・・・・・。 他人事に対しては、残忍で無神経な国民性、これは日本人 特有なのだろうか? そして匿名で、誰がやったか判らなければ何をやってもいい、何 でも出来るといった、言論の自由を振りかざす一握りの人たち。 「明日はわが身・・・」という言葉もあるが、人の苦しみや哀しみ がわからない人は、いつか同じ立場に立たされればいいと思う。 今日は人間の心に潜む『醜悪』な部分をもろに感じてしまい とても哀しい一日だった。
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