2004年
3月21日(日)
其ノ十九
「吐く息が 白く呟き 春まだ来」
 春分の日を過ぎても、朝はまだ寒い。
昨日は都心に雪が舞ったそうなそんな冷たい春分の日だったし 今日は陽射しは暖かそうだけど、空気は冷たく澄んでいて寒い 一日だった。
嬉しそうに談笑する人も、何か大きな声で怒っている人も、走っ ている犬も、イタズラ好きなカラスも、みんな口から真白い息を吐 いていた。
言葉や息や鳴き声よりも、春がまだ来ない事へのもどかしさを表現 しようとしているように思えた朝だった。
天気予報が明日はもっと寒くなる事を告げている。 『真冬なみの寒さ』だそうだ。
一体いつになったらぽかぽかした陽気が続くようになるのだろう。 人間の行動能力も随分気候に左右されるはずで、明日は元気 未満の一日を送る人たちも多いのではないだろうか。

 十六年前、ヨーロッパに行ったことがある。
仕事半分遊び半分の一人旅だったが、ウィーンは仕事だった。
コマーシャルの仕事で、ウィーン少年合唱団の録音をするのが僕の 唯一の仕事だった。
三月のウィーン、毎日10度前後の気候で、陽射しは春、吐く息は白く 空気が澄んでいてとても心地がよかった。
その時に聞いた話だが、ウィーンの歌手たちが朝の白い息を音符の吐息 に見立てて発声をして、息がリズミカルにエレガントに宙を舞うのを見な がら自分のコンディションを知り、そして輝かしい春の舞台での活躍を 占ってゆくらしい。
本当のような嘘のような話だが、生活の中のすべてに音楽が潜んでいる んだと感じたのを憶えている。

春、それはあらゆる物が新しい始まりを遂げる季節。
早く来い!夢を育む豊穣な春よ!

 

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