2004年
3月31
日(水)

其ノ二十九
「髪結いの 乙女がくれた 春一輪 」
 生まれつき自分の顔を鏡で見るのが嫌いな僕は、ついつい 髪を切りに行くことに億劫さを否めない人生を送っている。
髪を切るときと、髭を剃るときだけは観念して、髪と髭に視線 を集中させて鏡の前にいることにしている。
 去年の十一月に髪を切ったきりで延ばし放題にしておいた し、もういよいようるさくて限界を迎えていたので、一念発起(?) していきつけの美容院に今日行った。
あすから四月、新しい月を迎えることだし、明日は某社の入社式 にお招きを受けていて人前に出ることだし、丁度いいタイミングで あった事は間違いない事実だった。
 原宿にある美容院PのSさんは、僕が予約を入れる時は決まって 次の日かその次の日に何かやんごとない理由がある時なので、いつも 観念した僕を見て、微笑んで迎えてくれるのだ。
ぽかぽか陽気の年度末は、そんな観念した僕を嘲笑っているかのよう だったが、桜が咲き乱れ、街は人でごった返し、目に映る全てがウキウキ と、新しい季節への準備に追われているような一日だった。
明日からはあらゆる物たちが、新しい年度に向かって歩き始める筈だ。 そして僕も・・・。

髪を切ってくれたSさんと知り合ってもう七年になる。

いつも変わらず爽やかで元気な彼女がくれた「春」は今日の僕にとって、 ささやかな一輪の花のようだった。

サッパリした頭で喧騒の街に戻った僕は、何だかいろいろと大変だった 三月に別れを告げ、新たな四月に思いを馳せていた。

別れ際、Sさんに、「いい春にしましょうね!」といって店を出た。

何だかとてもいい気分になれた自分をみつけて、本当に「春」を掴まえ られそうな予感がしている。

ありがとう!Sさん。

 

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